もしあの時…

家族が次々と亡くなり、仕事でも行き詰まり、どこにも安心も安全もない日々の中で、いつしか心病んでいきました。そんなある朝起きれなくなり、精神疾患による2年間の休職となりました。もしあの時うつにならなかったら…そう問われて想像してみました。

何もかも、どんなにしんどくても馬力出して自分でやり抜いていたならば、私はきっと、鼻持ちならない傲慢な人間になったことでしょう。「限界なんて自分で作るからダメなんだ。」「人は、どこまでもがんばれる。」「やらないあなたが悪い。」そんなことを言いそうです。

あるいは、人間ですから、全く違う病気を発症していたかもしれないし、今はもう生きていないかもしれません。

どちらにしても言えることは、「私は鬱に救われた」ということ。あの2年間があったからこそ、今こうしてここに生かされている。限界を知り、人生に対する見方が変わり、誰かに頼ったり甘えたりする心地よさを知り、弱音を吐く人を愛おしく感じ、小さなことから幸せや喜びをもらい、矛盾を愛するようになった。人は弱くて小さいけれど、だからいいんだ、そう思える。私は、うつに救われ、孤独に育ててもらっています。いい人生です。