山本昌知先生は、岡山県を代表する精神科の先生です。87歳になられた今も、患者さんと向き合っておられます。先日、「沢田の杖塾」で、『人生を楽しむ』というタイトルで、ご講演いただきました。
その中に、「好きなことを楽しむ」という話があり、思い出したのです。クライエントとして、山本先生に診ていただいていた頃のことです。年単位で休もうと言われた後、「好きなことをしてごらん。すべきことじゃなくてね」と言われ、私の頭は真っ白になりました。自分が、何が好きだったのか、全く思い出せなかったんです。「‥‥‥先生、私の好きなことってなんでしょう……」。うめくようにつぶやきました。ぐるぐるぐるぐる。どれだけ考えても、思い出せないのです。ぐるぐるぐるぐる。
やがて、ふとしたきっかけで、好きだったことを一つ思い出したら、そこからは、自分がどんなことをしていたのかを少しずつ思い出していきました。そして、やってみました。けれども実際には、好きだったことをやっても心はなかなか動きませんでした。やがて、休み始めて1年半が過ぎる頃のことです。休んでいるという罪悪感も薄くなり、「楽しい」という感覚が蘇ってきたのです。そうこうしているうちに、「もっと休みを楽しもう」という気持ちが私のかなりの部分を占めるようになりました。すると、2年も終わり頃、山本先生に言われました。「学校に戻るのがめんどくさくなってきたじゃろう」。バレていました!
好きなことは、心の奥底からわくわくが込み上げて、夢中になっていく。「夢中になる。無心になる」。それは、心が色づき、内側から感動や喜びが込み上げる大切なことなんですね。