病理医の樋野興夫先生は、「がん哲学外来」の創設者です。一人の人間として患者さんと一緒に心の痛みを緩和する手立てを探るのが「がん哲学外来」である。と語っておられます。そこでは、患者さんのお話をしっかりと聴いた後、目の前の患者さんにふさわしい「言葉の処方箋」を渡されるそうです。ご存知の方もたくさんいらっしゃると思います。その樋野先生の本を読み進めていくうちに、癌で亡くなった妹のことをいろいろと思い出しました。
妹は、自分が癌に侵されていることを大切な友人に一人ずつ話しました。そして、「この先、私の友人でいたら、きっと辛くてしんどい思いもすると思う。それでもよかったら友人でいて」と伝えたのです。わざわざ言わなくても、辛すぎたら自然に人は去っていくのに…、あの頃はそう思っていました。が、今は、彼女は、闘う前に余計な心労を整理したのかなと思っています。
私は、手術から1年後に再発したことでパニックになり、元ホスピスのナースの方に相談しました。するとその方は、妹のことを「死にゆく人」と表現しつつ、ホスピスで患者さんとどのように向き合ってこられたかを教えてくださいました。決心するまでは半年以上かかりましたが、おかげで、『死』を前提とした話が妹とできたことは、本当に感謝なことです。「お姉ちゃん、後は頼むね」「うん」そんな会話ができたのですから。
そんな妹に、樋野先生だったらどんな「言葉の処方箋」を出してくださるのでしょう。「人は最後に『死ぬ』という大切な仕事が残っています」かな。残される私には、「全力を尽くして心の中で『そっと』心配する」でしょうか。今の私には「大切なものの本質は、案外小さい」かも。「よい言葉は、あなたの心の隙間に光を差す」もいいな。
二人に一人は癌になるというこのご時世。「いい人生だった」と言って人生の幕を引けれるようにしたいものです。そのために、まずは3年後の自分をイメージして、目標設定している今日この頃です。